JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

移動運用用HFマルチバンドアンテナ

短波帯で移動運用するときの、ひとつの面白さにバンドチェンジがあります。その時のコンディションに合わせてバンドを動きまわってAJAサービスしたり、移動局を追っかけたり、マルチバンドのコンテストに挑んだり、DXを追いかけたりとHFならでは遊び方があります。
クイックQSYに対応するためのアンテナとして、(釣竿)ロングワイヤ+ATUがポピュラーでしょうか。狭い場所でも建てられてFBなのですが、アンテナ自体で共振していないために送・受信にやや難があると言われています。マルチトラップのダイポールやウィンドム型アンテナも一般的ですが、寸法がそれほど変わらないフルサイズダイポールアンテナを張ったほうが飛びはいいはずです。
QSYのたびにアンテナをいじる操作が必要なりますが、逆V字マルチバンド“ギボシ”アンテナ(運用周波数に合わせて、エレメントの一部を切断できるようにギボシで連結したワイヤーアンテナ)が一番確実に動作し飛びも良いと思います。設置も慣れれば数分でできますし、作るのも簡単です
夏枯れのシーズンに入ってHFの調子が悪いので昨日・今日はあまり電波を出さず、炎天下の中(汗)、ギボシアンテナを作っていました。これまで何本も作っているのですが、今回は7/10/14/18/21/24/28MHz対応のものを作ったのでご紹介します。

まずはエレメントの長さの計算です。短縮率95%として、片エレメントの長さ(L/2)を求めました。

バンド 中心周波数 L/2[m] L/2×3[m]
7MHz 7.010MHz 10.13 -
10MHz 10.125MHz 7.07 -
14MHz 14.040MHz 5.09 -
18MHz 18.085MHz 3.95 -
21MHz 21.040MHz 3.40 10.19
24MHz 24.905MHz 2.87 8.61
28MHz 28.040MHz 2.55 7.65

L/2×3は、3倍高調波動作のときの片エレメント長で、21MHz以上では3倍高調波動作のエレメントにしてみました。QSY時にギボシを着け外しするときに、給電点を下ろす必要があるのですが、エレメント長が短いとかなり下まで降ろす必要があり、これが結構面倒。3倍高調波にするとエレメント端の方にギボシが集中するので作業がラクで、また通常の半波長ダイポールよりもハイゲインでビームパターンが広がるので国内向けにはFBかと思います。

この図のようなギボシの位置になります。

例えば、18MHzを運用するときは、aのギボシを切り離す。24MHzを運用するときは、a〜dのギボシを接続しeで切り離す。という要領です。
今回は少し太め2.5sq、AWG12相当のVFF線を裂いた線を使いました。いろんな線材を試してみましたが、安価なVFFが一番FBでした。これよりも細いとテンションをかけると伸びてしまうし、太いと扱いにくい。冬場の寒い時の移動運用では被覆が硬くなってしまうので柔らかい塩ビの被覆材が良いと思います。
実際に出来上がったアンテナの寸法は、

エレメント バンド エレメント長[cm]
a 18MHz 390
b 14MHz 100
c 10MHz 191
d 28MHz 75
e 24MHz 92
f 7MHz 120
g 21MHz 15

となりました(上の計算値よりも短くなりました)。もちろん、これらの寸法は、給電点高やV字の角度や周囲の構造物によって変化しますので参考程度に。また高調波動作バンドのSWRは若干高め(1.5〜1.8程度)になりますが、実用範囲に入ります。どうしても気になるようでしたら、1:1.5のアンアンなどを挿入すると良いと思います。他の半波長動作のバンドではSWR1.2以下になりました。



ギボシ部分は、このようにプラスチック(自動車用バンパー用のポリプロピレン基材)に穴を開けたものに取り付けるとFBです(間隔は5cm)。この間隔が狭すぎると、ギボシを切り離しても、エレメントが容量結合してしまい、共振周波数とSWRに悪影響が出るので要注意です。

調整を済ませた後でSWRの微調整をしたい場合は、アルミ線をギボシ部分に絡ませてエレメントを長くしたり、短くしたい場合はエレメントを一部折りたたんでビニールテープで固定したりと工夫しています。

なお、3倍高調波動作のときのビームパターンは、4方向のワイヤーに沿った方向にもビームを有するのが特徴で、DXに対しても割りとよい受け・飛びがある印象です。

移動運用中にEsが出たりしたら、すぐにハイバンド(28/24/21/18MHz)にQSYするようにしています(笑)。聞こえていましたら、コールよろしくお願いします。