JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

IDをQSOごとに送出すべきか?

CQオペレーションにおいて繰り返し議論される話題として「ID(自局コールサイン)をQSOごとに送出すべきか?」があると思います。あるCQ局がパイルアップを受けているのをワッチし、どこが出てるんだろうとしばらくその周波数をワッチしても、パイルアップだけが延々と続いていて依然としてCQ局のIDが分からない。呼びたくても呼べない、のを経験された方が多いと思います。束になって呼んでいる人は、かなり前に聞いたIDを把握しているか、クラスター、RBNまたはSkimmer等からの情報でIDを知っているか、でしょう*1

結論から言うと「QSOごとに送出すべき」と当局は思います。

IDを出さないCQ局の理由はこうです。

  1. IDを出さないことによって、パイルアップを減少させる。つまりパイルアップを制御するため。
  2. 呼んでくる人はこっちのID分かってるハズなんだから問題ない。
  3. IDを送出するのは面倒くさい。またはクセ。
  4. そういうスタイルがかっこいいと思っている。

1)および2)、かつては当局もそうでした。確かにIDを出さないでいると次第にパイルアップが止んでくるのですが、IDを送出するとまた束になって呼ばれます。つまり、IDが出て来るまででずっと待っている局がいるわけです。IDが出るまでの間隔が長いと痺れを切らしてQSYされてしまい、これではQSO数が稼げません。"??"を打ちたくても我慢している人がいるということですね。コンテストでもこういうスタイルの局がいるので困ったものです*2

3)および4)は単に面倒くさいまたはいつものクセでQSOの終わりに"QSL 73 TU E E"とか「QSOありがとうございました。73」で受信状態に入り次のQSOにつなげるスタイルです。その後誰からも呼ばれなかったら、"DE JF1DIR ..."や「こちらはJF1DIR ...」とするつもりなんだけど、呼ばれたからピックアップして次のQSOにつなげてしまうパターンです。これはうまくいけば効率がよいのですが、リズムが悪いと呼び倒されることになり、IDを出したくても出せないことになります。レアなQTHからのサービスや開局したばかりの記念局でこのスタイルをやると確実にカオスパイルになります。QSO中に"DE JF1DIR"とやっても、呼ばれ始めのタイミングがバラバラとなりロングテールコールが続き呼び倒しとなってしまうので、重要なのはQSOの終わりを明示的に宣言すると同時にIDを送出することだと思います。

逆にパイルアップになっているのにもかかわらず相手IDと自局IDを何度も送出するというパターンも見かけます(主に電話)。IDをフォネティックで言った後アルファベットで言い直したり、マイクバックの度にIDやQTH等を繰り返すのは全く意味のないことなので、せめてコンテストの時にはやらないでいただきたいです*3

QSOごとにIDを送出する理由はこうです。

  1. 一定のリズムができるので、呼ぶ方のタイミングが掴みやすい。呼び倒されるのを防ぐことができる。
  2. パイルアップを持続することができるので楽しい。
  3. 結果的にQSOレートが上がり楽しめる。

1)当局のやり方(特に電信において)ですが、呼ばせるタイミングは、"R QSL 73 TU DE JF1DIR K"を送出した後です。このときに"TU"が聞こえたら呼んでくるせっかちな局がいるので、"TU"と"DE"の間は極力スペースを狭くするのがポイントです。QTH等の送出は3回に1回でいいと思います。スプリット運用ならば"UP"が呼ばせるタイミングになりますが、IDの送出も頻繁にやったほうがよいはずです。
1)のオペレーションでの難しさは「ワンコール呼ばせたらすぐにこちらから送信しないといけない」ことです。パイルアップの中からフルコールをコピーしすぐさま返せればFBですが、部分的な文字でもいいし最悪"AGN?"や"QRZ?"でも良いのでとにかく何かアナウンスすることで、もたもたして何度も呼ばせるとすぐにカオスになりQSOレートが一気に落ちます。この辺はオペレーションの技量によるのですが、上手くなれば呼ぶほうも呼ばれるほうも楽しいものです。
慣れないうちは若干ロングテールで呼ばせて、後ろの文字をピックアップするのがよいですが、エリア数字のコピーだけを集中するとか、低めのトーンで聞こえる信号に集中するとか、何か特徴的な文字(頭7コールや移動局の/nや/QRP)に反応できるようになるとワンコールだけで反応できるようになります。これは慣れと訓練でできるようになります。どうしても無理ならば早々にスプリットにするべきでしょう*4

呼ぶほうも送信周波数をずらしたりといろいろ工夫して一発でピックアップされる技も身に付けることができます。当局の設備はモービルホイップですが、そうしたテクを使うと意外にも簡単に猛烈なパイルアップを抜くことができています。

とにかく呼び倒されないことは重要で、テンポよくリズミカルにパイルアップをさばいているCQ局は安定感があり、さほど需要がなくてもつい呼んでみようという気になります(笑)。レートを稼ぎたい、パイルアップを楽しみたいのならば呼び倒されないように注意すべきだと思います。

余談ですが、移動局の「/n(nは数字)」は毎IDにつけるべきだと思います。"CQ DE JF1DIR JF1DIR/1"と最初は付けないでで2回目で付ける方がいますが、このCQをRBNが捕捉すると"JF1DIR"でスポットされてしまいます。固定局と認識されRBNを頼りに移動局ハンティングしている局から無視されてしまいます。コンテストにおいてもIDを誤解される可能性があります。

2)珍しいQTHで移動運用したり記念局を運用するのは、別に頼まれてやっているのではなくパイルアップを楽しむためにやっているのですから、呼ぶほうも楽しくパイルアップに参加できるように運用すべきだと思います。IDを送出しない局や逆にパイルアップなのに効率の悪い運用では、呼びたくてもスルーしてしまうし、クラスタに頼った運用では誤ったIDをロギングをする可能性があるし、そもそもあまり楽しくないわけです。

3)どんなに長いコールサイン(記念局でありがち)でも毎回IDを送出したほうが結果的にQSOレートが上がるのを経験しています。この運用法はコンテストにも応用できると思います。

パイルアップではないときはのんびりとした気儘なスタイルでQSOすればよいのですが、クラスターにスポットされてパイルアップになったら上記のようなスタイルにしたほうが呼ぶほうも呼ばれるほうも楽しめるのではないかと思っています。状況に応じたスマートな運用を心掛けたいものです。

今回の話題とは関係ないですが電話における「サフィックス呼び」も悪名高いオペレーションとして有名ですが、当局は必ずしも"悪い"とは思っていません*5。猛烈なパイルアップでは効果があることは確かですし、フルコールを一気にコピーできない(PCに素早く打ち込むことができないなど)CQ局に対してははある意味「親切な」呼び方かもしれません。CQ局のクセやスタイルを見極めた上で呼び方を変えればよいのだと思います。

*1:多くは後者だと思いますが。

*2:呼ぶほうも呼ばれるほうも時間の無駄でしょう。

*3:漢字解釈やQSLカード交換の約束も同様。

*4:しかし国内運用つまり日中の7MHzのように混雑したバンドではスプリットしにくく受信周波数先でQRMを起こしトラブルの元になります。

*5:ウルサイことを言うと電波法上悪いようですが