JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

映画2014

無線とは関係ないことでも・・・
2014年はシアターでよく映画を観に行きました。「世の中が悪くなればいい映画が出てくる」と言われる通り、ここ数年前から観ごたえのある映画が増えてきた気がします。今年公開で劇場に観に行ったいくつか映画について簡単に感想を述べたいと思います。ネタバレがあるので気をつけて下さい。

ダラス・バイヤーズ・クラブ 評価A

酒と女が大好きな元カウボーイがHIVに罹ってしまい、HIVをめぐる社会の誤解に対して孤軍奮闘するというお話で、実話とのことです。主演のマシュー・マコノヒーと助演男優のジャレッド・レトアカデミー賞を取るほどのなかなかの演技と気合の入れようでした(マコノヒーはガリガリに激痩せ、レトはオカマを演じる)。HIVという病気が蔓延する初めの頃は副作用が著しい薬が多用されていたようで、エイズで早死する原因の多くは薬の副作用ということもわかりました。これまでの偏見を捨て去り、HIVの問題を通じて自由を勝ち取るために戦う主人公にとても感動しました。これがアメリカ的なんだなと。後に書くインター・ステラーでも大活躍のマシュー・マコノヒーは本当にすごい役者です。

それでも夜は明ける 評価A

アメリカの暗黒歴史奴隷制を真正面から描く映画で実は珍しいです。奴隷制を描いた映画は他にもリチャード・フライシャーの「マンディンゴ」と最近公開されたタランティーノの「ジャンゴ」くらいでしょうか。この「それでも夜は明ける」は実話をベースにしています。元はバイオリン弾きの自由黒人の主人公が騙され南部へ拉致され12年間奴隷になってしまった話です。製材所、綿花農場、サトウキビ農場と残虐な農場主の元へ売られていき、ぎりぎり人間としての尊厳を保ち続ける主人公。ラストで救われます。白人の大工ブラッド・ピット奴隷制度反対者、彼の手助けで自由黒人として認められ無事脱出。この映画、凄惨なシーンが続くのですが、ラストは大感動で本当によかった(汗)。アカデミーの作品賞に輝きました。

マチェーテ・キルズ 評価C

グラインドハウス」の予告編で出てきた架空の映画をホントに映画化した「マチェーテ」の続編です。とにかくオールスター出演で、どうしてこんな下らない映画にあんな役者が?と思うのですが、まぁ今回もそんな感じですね。ジェシカ・アルバミシェル・ロドリゲスは続投ですが、リンジー・ローハンが出てこなかったのがやや不満か(笑)。まぁ、流れで見てしまった映画でして、へそで茶を沸かす内容でした。次回作もありそうな予感ですが、もう観ませんよ(汗)。

ブルージャスミン 評価A

ケイト・ウィンスレット演じるセレブな主人公が突然無一文になり没落していくという半ばコメディです。プライドが邪魔して自由に振る舞えない悲劇を演じケイト・ウィンスレットは主演女優賞を取りました。そのくらいすごい演技。対照的なのが主人公が転がり込む妹。彼女も実にいい演技しており、妹の方は貧乏でも楽しけりゃいいじゃないのよって感じですが、妙に変なクセがあり、誰にも共感することができない。痛快でもありやや後味の悪さも同居して独特の感触がFBでした。

オール・ユー・ニード・イズ・キル 評価B

トム・クルーズ主演のSF映画。特筆すべきは原作が桜坂洋の同名小説というかライトノベルなのです。日本のラノベがハリウッド映画の原作になるってのは本来は大ニュースになるべきなのですが、世間的にはどうだったのでしょうかね。ノベルゲーでよくある「ループ」のゲーム的リアリズムをモチーフにした点が映画としてものすごく斬新でこれは評価に値するのですが、ラストの「少年ジャンプ的展開」には不満でした。上手く転がせなかったのかなぁと思うのです。ちょっと残念。

ウルフ・オブ・ウォールストリート 評価B+

関東地方が大雪のときに観に行って、帰りの電車が(一駅隣り)動かなかった記憶があります。監督はあのマーティン・スコセッシでありますから、これは絶対外せなかったわけです。これも実話をベースにしており、ディカプリオ演じる主人公の成り上がり人生を描いていくというお得意のスコセッシ映画でした。これがヒドイ人生で・・・全くと言っていいほど共感できません(まぁスコセッシ映画はそんなのばかりですけど)。ディカプリオにとってもマイナスになってしまったのではないかと心配するくらい品がないです。でも面白かったのでヨシとしました(笑)。「レモン」という薬がどういうものなのか気になりました(笑)。

アメリカン・ハッスル 評価B+

デヴィッド・O・ラッセル監督作品。「ザ・ファイター」と「世界にひとつのプレイブック」で結構感動したのでこれも期待して観ました。本作も実話をベースにしています(最近多い?)。まず驚いたのは主演のクリスチャン・ベイルのハゲ・デブのオッサンぶりです。クリスチャン・ベイルといえば最近ノーランの「バットマンシリーズ」を撮ったばかり。それなのにこの変容ぶりとは(汗)。マコノヒーと同様デニーロアプローチを地で行っている。内容は騙し騙されのミステリー仕掛けの展開でだれることなく大変面白かったです。ジェニファー・ローレンスエイミー・アダムスの競演も観ごたえがあり満足でした。これまでのラッセルの映画であった変なクセは極端に少なく、とても観やすい映画かもしれませんね。

ここから4本はこの冬に劇場で観たものです

インター・ステラー 評価A+

ダークナイト」「インセプション」がとても気に入っているクリストファー・ノーランの最新のSF映画。前評判も非常によく期待して観ました。表面上は主人公のマシュー・マコノヒーが地球に変わる人間が住める星を探索するという(実に凡庸な)設定です。科学考証の正確さや視覚効果(CGを使っていないそうだ)が評価されているらしいですが、そんなことは無関係にSFでしか描けない父娘のファンタジーを非常に感動的にかつ科学的に描けているという点で驚いてしまいました。こんなことが可能なのか?SF映画とは。その点は哲学者・作家の東浩紀の批評があまりにも的確すぎて目から鱗が落ちてしまいました。今思い出しただけでも震えが止まらないくらいです。ある意味思弁的な映画で今年観た映画飛び抜けてNo.1です。

ゴーン・ガール 評価A−

デヴィッド・フィンチャー監督のミステリー映画。結論として「セブン」「ゾディアック」と同様非常に「後味が悪い」映画でした。この後味が悪さが売りなのでしょうけど。脚本が非常に優れていて後半になるとガラッと様子が変わり(謎が解けてしまう)、最後はどうなるのか?という点に注目になり、最後の最後まで主人公のベン・アフレックのヘタレっぷりばかりが目立ちました(笑)。もう一度みたくなる映画です(DVDが出たら買おうと思います)。脚本が非常に優れているので絶対におすすめ。いろんな角度から批評が可能ではないでしょうか。

フューリー 評価A

割と本格的な戦争映画でした。出演もしてますがブラッド・ピットが製作に携わっています。彼が製作の映画はハズレがないと思うので観てみました。これが大あたり。「プライベート・ライアン」ばりのリアリズム(使用した戦車ティーガーI戦車は本物)で結構楽しめました。単なる戦争映画ではなかった。ラストはなるほど。マシンになりきれなかった主人公ノーマンは、同じくマシンになりきれなかったSSによって見逃されて無事生還。果たしてノーマンは人間らしさを取り戻せたのか・・・とても上質な戦争映画でした。オスカー獲ると思います。

神は死んだのか 評価C

マイナーだけど気なる映画だったので有楽町まで出かけて観に行ってみました。原題は「God's not dead」であることからキリスト教のプロパ映画だってことは40%くらい確信していたのですが「クリスチャンの学生が無神論者の哲学教授と白熱論議をする」らしいと聞いたので、それを楽しみにしました(ちなみに当局はクリスチャンではないのですが無神論者でもなくスピノザ的な神はいるんだろうというヌルい立場です)。新入生の主人公ジュシュは無神論者の哲学教授のクラスを履修してしまう。第一講で受講生たちに「God's dead」と無理やり書かせるというもの(そんな哲学者いるかよ〜^^;)。さてクリスチャンのジョシュがそれができないと訴えると「じゃ次からの3講で神が存在することを証明しろ」という課題が課せられる。このへんからちょっと面白くなります。また主人公とは関係のない人物の描写もカットインして群像劇っぽく描きます。しかし期待してた哲学白熱論議は実に安っぽく全く評価に値ぜず。恋人を捨ててまでジョシュは哲学教授との議論の準備に骨を折り(プレゼン能力はすごい)、その哲学教師は無神論者ではなく、元クリスチャンで過去に神に見捨てられたと思っている「反有神論者」に過ぎなかった、ことを証明して見せてジョシュの勝ち(無神論ではなく反有神論だから神が存在するわけ)。これで終わりかとおもいきや、後半はずーーっとキリスト教プロパガンダ映画でした。無神論者の(ホントは反有神論者)哲学教師に天罰が加えられ、クリスチャンにとって都合が良すぎる展開には閉口しました。これがアメリカでもヒットしたのかぁ?群像劇もまとまりがなく終わってしまった。観てはいけない映画です。



2015年も期待できそうな映画がたくさん公開されるはずです。今から非常に楽しみです。