JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

Hendrick Tribanderの製作

QRPキットで有名なHendricks QRP Kitsのラインナップの一つ、KD1JV Tri-Bander CW transceiverを作ってみました。このキットを作った方、まわりにたくさんいらっしゃいます。安くて評判が良いようで当局も手を出してしまいました。先月のCQ誌にJF3DRI西村さんによる製作記事が載っていました。

このキットの特徴は購入時に3バンド(3.5〜21MHz)自由に選べるというものです。当局はCWで手軽に遊べる7/10/18MHzを選んでみました。これで200ドルとは随分お得です。Webで注文・PayPal決済で約10日ほどで到着しました。

完成図がコレです(まだデカールを貼る前の写真ですけど)。上蓋ケースの塗装は電着塗装で仕上げています。

中の基板はこのように局発からファイナルのLPFまで全て一枚に収まっています。CW専用なのでSSBジェネレータとかありません。

製作の内容はJF3DRI西村さんの記事を見ていただくとして・・・省略です(笑)。


回路構成は、受信部はDDSからのLO信号でIF=4.9MHzへギルバートミキサICのSA612Aで変換し、クリスタルラダーフィルタを通して、IFアンプ無しのSA612Aでプロダクト検波、続いてOPアンプによるアクティブフィルタ、LM386によるAFパワーアンプというシングルスーパーヘテロダインの構成です。AGCはAFタイプで、386の出力をJ-FETに入れてD-S間のコンダクタンスに変換。これを386の入力レベルに連動しているタイプです。IFアンプ無しでも割に感度がよく、-120dBmの信号も認識できました。大したもんです。混み合ってる休日の7MHzCWを聞いても混信が気にならず、フィルタの切れも申し分なしでした。
送信部は、局発であるDDSからの出力をそのまんまアンテナまで増幅しており実にシンプルです。つまり、受信時にはIFだけオフセットをかけた周波数をDDSで発生させミキサへ、送信時ではオフセットなしにドライバへと切り替えているというもので、ΔTXをIF分にしているイメージです。このメカニズムはDDSならではです。DDSの出力をCMOSロジック(NANDゲート)でバッファリングして、TO-92パッケージの小信号MOS FETのBS170の3パラシングルを矩形波ドライブしています。もちろんC級動作。ドレインには電源電圧が直結しており、この回路で13V時に約5〜10Wの出力が出ます(結構ばらつくようです)。

送信部がQRPならではで特徴的です。回路図を抜粋すると、


ドレインには35μHのチョーク負荷だけです。矩形波をインダクタンス負荷で動かすのは、まさにモーターやリレーをスイッチングするのと同じです。47VのツェナーでクランプしているのはL負荷で生じる高圧サージ対策のためでしょう。

そのドレインの信号を観察するとこんな感じ(赤色)です。やや波形がナマっていますが、C級動作っぽい波形になっていますよね。黄色の波形はロジックの出力(ゲートドライブ信号)で、矩形信号がリンギングしているのが気になります。この測定に問題があるか、入力系がマッチングしていないためでしょうか。FETは十分に効率的に動いていますので、特に問題はないと思います。

念のため、出力信号の高調波スプリアスを測定してみると、-50dB以下と問題ないレベルです。

基本波の近傍にスプリアスが出ていますが、バンド外に出ているし、レベルも十分に小さいものです。この近傍スプリアスは18MHzになると全く検出されないレベルにまで低下してました。おそらくDDSから発生しているものですが、実用上問題ありません。

さて、これの送信系統図を書くとこんなかんじでしょうか。

局所発振器(AD9834)→緩衝増幅(74AC02)→電力増幅(BS170×3)→LPF→アンテナ

2ページ目に「定格出力の測定は、送信機の空中線出力に擬似空中線回路(50Ω)を接続し、第一電波工業社製高周波電力計SX-200を用いて行った。終段ドレイン電圧13Vにおいて、定格出力は5Wであった」と書くことにします。


無事設備変更申請が降りたら、交信よろしくお願いします。