JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

読んでいる・読んだ本いろいろ

またまたネタがないので最近読んだ(まだ全部読んでないのも含む)いくつかの本の内容を少し紹介します。

表現と介入: 科学哲学入門 (ちくま学芸文庫)

表現と介入: 科学哲学入門 (ちくま学芸文庫)

ハードカバー版から30年経って最近文庫版が出ました。帯に「入門的な科学哲学書」とありますが、著者の意見がタップリと盛り込まれているので、入門書としては適さないような気もします。他の科学哲学書や科学論と違うのはかなり「実験科学」について後半詳しく言及しており(ファラデーやデイビーが出てくる)、実際の科学者・工学者にも深く納得できる内容になっているのではと思いました。実在論や概念分析は前半で論じられていますが、冗長でちょっとわかりにくいです。なにより残念なのは訳が全く良くないことです。今まで読んできた哲学書の中で最悪の部類です。

ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義

ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義

ハンナ・アーレントの『人間の条件』をみっちり解説している本で、割りと売れているらしいので読んでみました(まだ途中です)。政治概念を論ずるのに古代ギリシャの社会を持ち込んでいるので分かりにくいというか、ちょっと違和感がありますし、『人間の条件』は内容の割には冗長なので真剣に読めていないので、このような解説本が欲しかったところです。

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセルの『教育論』は読んでみたことはあるのですが『幸福論』を手に取り、今更読みました。結構読みやすく無神論者のラッセルらしい明快な著述でした。前半部分は「不幸の原因」、後半は「幸福をもたらすもの」を論じ、前半の部分をごく簡単にまとめると、以下のようになります。

原因 解決法
バイロン風の不幸 身の回りの小さいことにも幸せを感じるべき
競争 成功のために犠牲になったのこともを忘れないこと
退屈と興奮 退屈に耐えるのも幸せの一つの要素
疲れ 身体と心の負担を減らす工夫をすべき
ねたみ 他人との比較をやめるべき
罪の意識 不合理な信念に支配されないこと
世評に対するおびえ 世間を気にしすぎるのも、気にしすぎないのもダメ

科学の危機 (集英社新書)

科学の危機 (集英社新書)

『サイエンス・ウォーズ』で有名な金森氏の科学論というよりは科学の社会論についてのエッセイ的な最近出版された新書です。STAP細胞の事件もあり科学という営みについて最近の研究例を交えて非常にコンパクトかつ分かりやすく解説しています。ちょっと冗長なところはありましたが。

科学の社会史―近代日本の科学体制 (自然選書)

科学の社会史―近代日本の科学体制 (自然選書)

金森氏の新書で紹介されていた広重徹氏の代表的な著書を古本屋で見つけたので早速読んでいます。1973年の著作ですが今でも十分に通じる論です。広重氏は47歳で亡くなったのですが、その割には重要な著作をたくさん残されています。機会があれば他の著作も手に入れて読んでみたいと思います。

心・身体・世界 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

心・身体・世界 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

ヒラリー・パトナムの著書はこの他に『理性・真理・歴史』『化学的認識の構造』を呼んだことがあるのですが、パトナムの文章があまりまとまっておらず正直って悪文です。この本はそうでもないので少し読みやすいです(まだ全部は読んでいません)。最後の章に「クオリア」についての論文が載ってあり、これが興味深そうです。

この本の存在は以前から知っていたのですが、なんとなく俗っぽい感じがしたので敬遠していました。Kindleで安く買えるので今更読んでみたという次第です。本書についてブログ等でかなりの数のレビューがあり、いくつか目を通したのですが、だいたい彼らと同意見です。内容は物理学者の須藤氏が科学哲学について否定的な意見をぶつけ、科学哲学者の伊勢田氏が応えるという対談です。両者全く噛み合わず、喧嘩腰なやりとりなので読んでいてヒヤヒヤしますね(汗)。伊勢田氏のモットーであるクリティカル・シンキングが科学の現場では必ずしも有効ではなく効率が悪い、という認識が伊勢田氏にはなかったのかな、と。一方、科学哲学の中心テーマとなる「因果論」「科学認識論」は正直科学の営みにとってどうでもいいのだけど、哲学者の観点では重要な概念分析の対象となる。哲学とはそういうもんだ、ということが須藤氏にはわからなかったらしい。須藤氏は「科学の役に立つように、哲学者は目的を明確にし方法論を考えなさい」と説教する場面も(汗)。読み終わってモヤモヤが残る本でした。まぁ面白かったのですが^^;

春日太一氏の『なぜ時代劇は滅びるのか』を読んで、ずいぶんと切れ味鋭い分析をするものだなと関心したので一気にファンに成りました。また、春日氏の影響で最近良く時代劇をひかりTVで見ています。春日氏の一番の苦労作(一番売れている?)である本書も手にとって読んでいるところです。ますます時代劇が好きになりそうです。昔は作る側の熱気がすごかったんだなぁと。