JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

2015年上半期に劇場で観た映画

今年に入ってから観たい映画が少なくなってしまった印象です。でもだいたい月に1本のペースで新作を劇場で観ているのでまぁペースはいつも通りでした。とりあえず今年上半期に観てきた映画を簡単に紹介したいと思います(ネタバレはありません)。

イミテーション・ゲーム 評価A+

タイトルからはサッパリ分からないのですが、サブタイトルが「エニグマと天才数学者の秘密」。つまり天才数学者・コンピュータ科学者のアラン・チューリングの伝記的映画とわけですから、これはずいぶん前から楽しみにしていました(科学者の伝記映画は結構好みのジャンルです)。近所のシネコンで公開されてすぐに観に行きました。注目作品だったようで結構なお客さんが入っていました。
観る前まではチューリングはコンピュータ科学の理論面を主に研究した「数学者」というイメージでした。でも実際にコンピュータを一から(一人で)組み立ててしまったということに驚きました。映画では生い立ちから丁寧に描かれていて暗号解読に至るドラマチックな展開も非常によくできており(アカデミー賞作品賞にノミネート)、なによりベネディクト・カンバーバッチの演技には舌を巻きました。婚約者役のキーラ・ナイトレイも素晴らしい演技でした(どちらもアカデミー賞主演男優、助演女優賞の候補になった)。そしてラストの悲劇もよく出来ていましたね。コトがコトだけにエニグマについて長い間国家秘密になっていたようです。戦争の歴史、コンピュータの歴史を語る上で重要な映画であり、おすすめの映画です。

アメリカン・スナイパー 評価B

イラク戦争で戦った実際のスナイパー、クリス・カイルの回想録を映画化したもの。クリント・イーストウッド監督の最新作で全世界的にヒットした映画でしたね。リベラルからは戦争を美化した映画だ、と酷評のようですが、イーストウッドはそんな映画を作るはずがないので、どんなもんかと公開されてすぐに観に行きました。戦場シーンはプライベート・ライアンばりにリアルでその辺はずいぶん楽しめました。戦場から引退して主人公はだんだんと崩壊していく様が見ものだったと思うのですが、そのへんの描写がちょっと物足りない感じもしました(しっかりと立ちなおちゃうし)。
主演演じるブラッドリー・クーパーはこれまではチャラチャラした役が多かったと思います(笑)。今回はさすがにシリアス。結構立派な役者なんだなと(汗)。
良い映画だと思います。しかし2度観たいとは思いませんでした。

インヒアレント・ヴァイス 評価A

ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)の新作が出るというので、もうこれは必見でしょう。ブギーナイツマグノリア、ザ・マスターとPTAは好きな映画の上位に占めています。確かゴールデンウィークの昼間にシネコンへ観に行ったのですが、客はたった数人だけ(隣の妖怪ウオッチは超満席だったようだ)。舞台は70年代のLA、ドラッグとヒッピーだらけ。最初から最後までサブカル臭ただよう世界でした。内容はかなり難解でこれは数回観ないと筋がわからない(ようにできている)。まさにPTAですね(笑)。ベニチオ・デル・トロが似合わない役で出ていたのでびっくり。DVD出たらもう一度観てみようと思います(汗)。

あん 評価B+

日本映画を劇場で観るのは相当久しぶりです(おそらく桐島以来か)。今年のカンヌ映画祭で好評だったという話を何処かで聞いて気になっていたので、公開早々に海老名のイオンシアターで観てきました。平日の夜だったので、客は10人位。どなたもご年配の方たちでした(苦笑)。監督は河瀬直美で、これまで彼女の作品のうち「萌の朱雀」と「殯の森」をDVDで観たことがあるのですが、作家性が全面に出過ぎて正直観るのが辛かった記憶があります。しかし「あん」では割りと万人向けにできている、とのことで多少安心して挑むことができました(笑)。
主演の樹木希林永瀬正敏は非常にリアルかつ鬼気迫る演技で、最後まで引きつけられました。舞台は都会ではありますが、自然を写す映像の一つ一つが河瀬直美らしく描かれており、小豆が煮える様子や木々(桜)のざわめき感は美しかったです。作品のメッセージは比較的分かりやすくかつ普遍的でなかなか良かったと思います。
予想以上の人気で公開劇場がどんどん増えているようです。公開中のところが多いと思いますので、ぜひ。

やさしい女 評価A

今年の正月頃に、ふと本屋で講談社文芸文庫『やさしい女・白夜』を見かけました。帯には映画化とあります。ん?ドストエフスキー原作の小説が映画化?と、ちょっと調べてみるとフランスのロベール・ブレッソン監督の1969年の作品のことで、日本では1986年に一度公開されていたものの、DVD等のソフト化がされないまま30年ぶりにデジタルリマスターで再度上映されるということです。ドストエフスキーの小説は『カラマーゾフの兄弟』と『悪霊』が特に好きで、最近になって亀山新訳の悪霊を読み終えたところだったので、絶対に観に行きたいと思っていました。
6月になり神奈川でようやく上映されるとのことで、横浜のジャック&ベティで観てきました。映画を観る前に『やさしい女』を小説で読んだので、映画を観ているときはどうしても原作との比較をしてしまったのです。原作では主人公の男は神経質症的で気が動転している感じの描写が最後まで続くのですが、映画では終始冷静かつ沈着、常にクールなのです。しかこれがブレッソン監督の演出であり、本作のテーマと相まって後からジワジワ来る感じ。セリフも最小限。終始コツコツと床を響かせる靴音が映画のテンポにもなっており、最後まで全く飽きがなく観ることが出来たのでした。帰りの電車の中でずいぶんと考えてしまった。なぜ彼女は自殺してしまったのだろうか?
一般受けしないと思いますが、ぜひDVD出て欲しいですね。しかし非英語圏にはこういった幻の名作が多いんでしょうね。


下半期はアカデミー賞受賞作品がどんどん公開されるので楽しみです。「ゼロの未来」「アリスのままで」「Dearダニー」あたりは観に行こうかと思っています。