JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

オーディオ電子回路設計の教科書

電子回路、とくにオーディオの電子回路に関するまともな教科書というのは、意外にも少ないように感じられます。例えば、『無線と実験』に載っているトランジスタディスクリート式のハイファイアンプの製作記事が載っていたとします。回路図が書かれていて、回路に関する簡単な解説、製作方法・・・・と記事が続きますが、回路に関していくつか疑問が湧いてくるわけです。例えば、この位相補償キャパシタの値がなぜ100pFなのか?なぜ出力段に準コンプリエミフォロなのか?差動2段と差動対称回路では何が違うのか?と、調べれば分かることもあれば、やっぱり分からないことがある。アマチュアがやる自作オーディオの回路とは言え、合理的な説明が欲しいときがあります。真空管の回路ならば理解が容易ですが、石となると知らないことが多かったりします。

当局が信頼するオーディオ回路の教科書(製作記事ではなく)は、黒田徹氏の『基礎トランジスタ・アンプ設計法』『実験で学ぶ最新トランジスタ・アンプ設計』です。どちらも、対話方式で説明しているためか、かえって読みにくい(調べにくい)ところがあるのが残念です。しかし、かゆいところまで手が届いている優れた教科書です。素子の選択の方法もよくわかり実践的かつ理論的です。
残念ながら、半導体オーディオ回路に関しては黒田氏のこれしか見当たりません。

しかし、目を海外に向けると、たくさん見つかります。最近、アマゾンで取り寄せては、毎日舐めるように読んでいます(苦笑)。特にお奨めしたいのが、Douglas Self氏の"Audio Power Amplifier Design Handbook"です。プロのエンジニアのための非常に読み応えのある技術書で、自作オーディオマニアのアマチュアが読むような本ではないのですが(苦笑)、回路の理論だけでなく実際の回路も数多く載せてあり、回路定数一つ一つ、信号の変化の仕方、歪み発生のメカニズムなど詳しく解説されています。更に、電源回路、D級アンプ、保護回路なども詳しいので、毎ページ勉強になります。近日中に発売される同氏の"Small Signal Audio Design"も予約してしまいました(笑)。

この事情は、無線の回路設計解説書も同様で、国内の本でも良いものもあるのですけど(製作に関するものならばCQ出版社から数多くでていますが、理論解説書となると少ない)、海外の技術書に軍配が上がると言わざるを得ません。例えば"The ARRL Handbook for Radio Communications"だけでなく、"RF Circuit Design", "Introduction to Radio Frequency Design", "RF Components and Circuits"などでしょうか。またの機会にご紹介します。

Audio Power Amplifier Design Handbook

Audio Power Amplifier Design Handbook

Small Signal Audio Design

Small Signal Audio Design

The ARRl Handbook for Radio Communications 2010: The Comprehensive Rf Engineering Reference

The ARRl Handbook for Radio Communications 2010: The Comprehensive Rf Engineering Reference

RF Circuit Design, Second Edition

RF Circuit Design, Second Edition

RF Components and Circuits

RF Components and Circuits

Introduction to Radio Frequency Design (Radio Amateur's Library, Publication No. 191.)

Introduction to Radio Frequency Design (Radio Amateur's Library, Publication No. 191.)