JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

SSBジェネレータの実験 その2

前回の実験では、東芝のTA7320を使ったSSBジェネレータを試作しました。二重平衡変調器は数多くありますので、手持ちのICで実験の続きをしてみました。アマチュアにとって使いやすいICは、昔ながらの2.54mmピッチの基板挿入実装タイプですが、現行品で入手しやすいものは多くありません。ざっと思いつくものでも、NE(SA)612, NE(SA)602, SN76514, SN16913, MC1496, MC1495, TA7320, TA7358(A)P(G)くらいで、RFに使えるかどうか微妙なアナログマルチプレクサもいくつか思いつきます。
いまどきのICはすべて表面実装チップICで、入手しにくく*1工作が大変なのですが、携帯電話などで使われているICも入手しましたので実験してみました。
回路の構成は、マイクアンプ:ECMオペアンプで単電源動作で20dB増幅、局発:14.318MHzの水晶を変形コルピッツで発振、混合:マイクアンプの出力と局発を平衡変調しDSB波を作る、バッファ:JFETのソースフォロワで緩衝増幅、USBフィルタ:クリスタルラダーのHPF(今回は後者2つは省略しました)。
使ったICは、(1)東芝のTA7320、(1−2)東芝のTA7320(TA7320内のRFアンプ回路を利用)、(2)NE612(局発はIC内の回路を使用)、(3)TA4101F(携帯電話用のSSOPパッケージ)、(4)MC1496(単電源動作)、(5)伝送線路トランスのバラモジ(比較のため、ショットキバリアダイオードは1SS106クワッド選別品)
下の写真はDSB波を取り出すまでの回路を組み上げたもので、左から順に、TA7320、TA4101F、SA612、伝送線路トランスです。

評価はキャリア抑圧比と相互混変調歪(IM3)(インタセプタポイント)と使い易さ(入手性・お値段も)です。まず、キャリア抑圧比ですが、実はどれも結果は同じでした。抑圧比は30〜35dBで、データシートの値のとおりでした(下の画像参考、入力1kHz正弦波*2)。ただし、入力インピーダンスが高いとキャリアが漏れる事がありました。おそらく入力バイアス電流が原因でDCオフセットが生じるためだと思います(オペアンプと同じ事情)。TA4101Fは0.65mmピッチのSSOPなのでハンダ付けに苦労しました。人間が裸眼でやる作業ではありません。TA4101Fだけがややキャリアが漏れ気味で20dBくらいでしたが、UHF用なので動作範囲外なのか、単に使いこなせていないだけのような気がします。

IM3はちゃんと評価していないので、後回しです(苦笑)。お値段は、TA7320が入手しやすく200〜300円で最も安く入手できます。NE612も入手性がよく、海外通販を利用するならば200〜400円で入手可能、発振回路が内蔵されているので部品点数が少なく済みますのでトータル的に安上がりになるかもしれません。TA4101Fは安いのですがSSOPなので工作が大変(ピッチ変換基板の方が高価)。伝送線路トランスはキャリアパワーが結構必要で、0dBm欲しいところですから、発振回路の後にポストアンプが必要になったりして回路の規模が大きくなってしまうかもしれません。個人的にはTA7320が気に入りました。

今回、ガラエポ片面銅張のユニバーサル基板で作りましたが(0.55mmスズめっき線で結線)、ベタアースがなくても割と安定に動きました。

*1:世の中にはたくさんあるのですが、アマチュアが出入りするパーツ屋の店頭に並んでいないだけ

*2:グラフの見方。横軸周波数(0.5kHz/div)、縦軸信号のレベル(dBm目盛, 10dBm/div)。3本のピークのうち、左右2本が周波数混合で生じたLSBとUSB波。真ん中が局発からのキャリア。キャリアとUSB/LSBのピーク高さの差から抑圧比約30dB=1/1000と読める