JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

ロクタル管スーパーラジオ

電波伝播コンディションの低迷と伴いハムのアクティビティもすっかり落ち込んでいます。こういう時は電子工作に時間を費やすことにします・・・春と秋は運用で忙しくて工作ができないから(苦笑)。

正月休みから取り掛かっている管球式ラジオを仕上げました。mT管とGT管で組んだスーパーは過去に作ったことがあるので、ちょっと変わり種でロクタル管で作ってみました。GT管で作ったものを全て分解し、真空管とソケット以外を再利用しています。幸い、GT管とロクタル管のソケットは取り付け穴の寸法が一致したのでシャーシを加工する手間が省けました。

せっかくなのでシャーシを再塗装しました。ちなみに、アルミに塗装する際にはかならず(下塗り)プライマーを塗ることが大事です。最低でもエッチングプライマー(またはウォッシュプライマー)で下地処理しないと、ちょっとコスっただけで剥離してしまいます。後片付けが面倒ですが、クロメート系のプライマーを塗布しその上にアクリル系のラッカーを1コートで仕上げました。

ロクタル管にはスーパー用の球が揃っていて、入手もそれほど難しくありません。整流管を省いたので4球スーパーとなっていますが、構成と回路は一般的な5球スーパーと同じです。

左から、周変管7Q7、中間周波増幅管7A7、検波・低周波増幅管7B6、低周波電力管7C5。

ちなみに、GT管では6SA7, 6SK7, 6SQ7, 6K6(電力管は6V6もよく使われます)。ついでに、mT管は、

6BE6, 6BA6, 6AV6, 6AQ5(と整流管の6X4)などが使われます。これらの真空管は、当然現在では製造されていませんが、NOS(新品在庫)が豊富でまだまだ入手が容易です(ヒーター6.3V管はやや高価です)。日本ではクラシックコンポーネンツ、海外ではAESを利用するとよいでしょう。

個人的な印象ですが、ロクタル管はGTやmT管に比べると冷たい感じ。触って持ってみるとわかりますが、GT管よりも軽く華奢な感じもします。ガラスの肉厚が薄く、ベースがアルミ板製のためでしょうね。あまり人気がないので安く入手できる一方、ソケットが高価になってしまいます。


スーパーで重要な部品はアンテナコイルとバリコン、IFTですね。今回は、ラジオ少年という管球式ラジオの部品を販売しているショップから入手しました。ここのIFTはちょっと高価ですが、小柄サイズで使いやすく選択度もFBです。親子バリコンを使ったので局発側のパディングコンデンサーは必要なしとなりました。入手しにくい局発コイルは自分で作ってみました。バリコンの局発側の容量が120pFなので局発コイルのインダクタンスは220μHくらい。トロイダルコアFT50#43に巻くと22tになります。カソードタップはほぼ中点になるように作りました。実際に組んでみると、配線のインダクタンスのせいでバリコンの羽を全部入れても813kHzで発振し、これでは低すぎです。950kHzで発振するようコイルを巻き戻して、19t(実測153μH)でいい塩梅になりました。このあたりは実装してみないと決められないものですね。完成するとこんなかんじです。バリコンにはバーニアも付けました(目盛り振ってません)。

シャーシが大きめなので、かなり余裕のある感じです。

セオリー通り、AVC回りの配線は最短でかつVR周りにはシールド線を使って(ループしないように網線の片方を外す)配線しないと、発振したり不安定になります。また、真空管の熱によって局発コイルが炙られて受信周波数がどんどんずれていきます。まぁこれはこれで趣があってよろしいのでは・・・ハムは最小になるように努力しました。

バリコンのトリマーでトラッキング調節。各段の出力が最大になるようにIFTを調整し、アンテナ(7MHzのモビホ)を接続すると、なかなかいい音で鳴ってくれます。綺麗に受かるのはNHKニッポン放送くらいですが(他は弱くて海外局のQRMを受けてしまう)、選択度もちょうどいい感じで聴きやすいです。

受信の様子を動画にあげてみました(2013/2/4)。


次回はオールコンパクトロン(デュオデュカル12ピン)管で作ってみたいのですが、周波数変換管が揃っていないようですね(求む情報)。グリッド混合でもいいので作ってみたいと思います。整流管もコンパクトロンでね。


【追記】

順調に動いていた本ラジオですが動作が不安定になってしまいました。いろいろ調べたところ発振電圧が高すぎるようです。トロイダルコアで作った局発コイルを作り直し、カソードタップはグランドから2回巻にしました。この時のカソードは1.2Vppで発振してます。これでずいぶん安定になりました。

ついでに管球式スーパーラジオの調整法を記しておきます。用意するものはオシロスコープ、周波数カウンタと信号発生器。オシロで周波数を計測できれば周波数カウンタは不要です。信号発生器は振幅変調がかけられるものであればなお良いです。

セット全体が組み上がったら球を挿入して通電して各段のプレート、カソード、スクリーングリッド、AVC電圧などをチェックします。良さそうならば、後段の2つ(電圧増幅段・電力増幅段)の球を抜いて再度通電します。バリコンを適当な位置にして、周変管のカソードにオシロスコープを当てて振幅電圧と周波数を測ります。バリコンの位置をそのままにして局発周波数から455kHzを引いた周波数の信号をアンテナ端子に加えます。レベルは0.1VppでOKです。次に1つ目のIFTの2次側グリッド端子(つまり中間周波増幅段のグリッド)にオシロを当てて、455kHzの信号が出ているか確認します。IFTの2次側コアを回して振幅が最大になるように調整します。次に1次側ですが、コアを回していくうちに振幅が急に大きくなるようでしたら、自己発振の可能性があります。アンテナ入力を切り離しても455kHzの信号が出ているようでしたら、ズバリ発振です。発振し始めるちょっと手前のコア位置にしておきます。同様に2つ目のIFTも振幅が最大になるように調整します。

次に電圧増幅管と電力増幅管を挿入しスピーカーを接続して実際に放送を受信してみます。これで受信できるはずですが、バリコンを回して至るところでビュンビュン音がしたり、ほんの少し離調しただけで歪が大きくなる場合は、発振気味です。1つ目のIFTの1次側コアを少しだけ感度が落ちる程度に回し調整します。

次にトラッキング調整です。低い受信周波数、例えばNHK第一594kHzを受けてダイヤル目盛が合うように(またはNHKが受かるように)、局発のパディングコンデンサを調整します(ない場合はコイルを調整)。次に高い周波数、例えばニッポン放送1242kHzでダイヤル目盛が合うようにバリコンのトリマを調整します。信号発生器を入力する場合は1kHzのAM変調をかけた信号をアンテナ端子に入力します。低い方と高い方でどうしても合わない場合や感度に違いがある場合は中間周波数を少し変えるという方法もありますが、その場合はIFTの調整も全部やり直しです。