JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

コンパクトロン管スーパーラジオ

これまで管球式ラジオとして、オールST、GT、mT管そして最近オールロクタル管のスーパーラジオを作ってきました。残すはマグノーバル管、ニュービスタ管、サブミニチュア管、コンパクトロン管で、今回は球の入手が容易なコンパクトロン管を製作することにしました(オール直熱やオール12V管も面白いのでそのうち作ります)。これは多分誰も作ったことがないと思います。

コンパクトロン管は真空管時代の最後のほうで開発された真空管で、TVなど多数の真空管を使うセットにおいて、より小さく軽くするために工夫された真空管です。ちなみにコンパクトロンという名称はGEの商標らしいので、正しくは「デュオデュカル12ピン管」と言われるようです。真空管後期のTVなどの高周波機器で活躍した球なので基本的に多機能・高性能。また、ピンが12本あるために球抜けしにくく、ソケットへの放熱も良好で、mT管の電極間容量を保ちながらGT管と同様の大電力を取り扱えるというメリットがある反面、複合間ゆえに、球を交換する際には健常なユニットも捨ててしまうデメリットもあったそうです。6JS6や6KD6などのTVの水平偏向管はアマチュア無線機の終段にも採用されハムの間でも有名です。

コンパクトロン管は大量消費時代のTV用に大量に製造された球ですが、不恰好な形状ゆえに現代のマニア(主に音声周波パワーアンプビルダー)にはすこぶる人気がなく、いわゆる駄球扱いされています。ゆえに新品在庫が豊富で非常に安価に入手できるのが現代における最大のメリットでしょうか(苦笑)。ロクタル管と同様ソケットの方が高価になってしまいます。

コンパクトロン管にスーパー用のラジオ球がそろっていないので、適当に探してみることにしました。

整流回路

コンパクトロン管に全波整流できる整流管がありません。仕方なく、たくさんあるダンパー整流管で半波整流することにしました。手持ちの都合で6CG3を使うことにします。DC 350mAの容量なので余裕です。しかしヒータが大食い(1.8A)。ダンパーなのでこれは仕方ありません。

周波数変換回路

5格子周変管のコンパクトロン管がないので普通の5極管のグリッド注入方式で対応することにしました。周変管ではないですが、Gated-Beam Discriminatorの6J10/6Z10があるのですが、これは次回の課題にいたします。経験的に初段の5極管には高gm管を使うと発振の危険性があるので中gm管を選び、局発管は中μの3極管にしました。この組み合わせの複合管は非常に多種類あります。今回は手持ちの都合で6BH11にしました。中μの双3極管とgm=7,500のシャープカットオフ5極管が封入されている球で3極管が一つ余ってしまいます。ちなみに、局発回路は別のユニットを用いるので、この場合は変換ではなく混合と呼びます。以下混合とします。
5極管混合の場合、問題となるのは局発の漏洩と局発周波数の引っ張り現象であり、局発のスプリアスの観点からも、局発信号レベルは極力小さいほうが望ましく、となると低い電圧でカットオフする球が適切なわけです。カットオフ付近にバイアス点を選んだ増幅器なので、検波回路と同じでその形式はプレート検波型とグリッド検波型があります。設計の容易さでグリッドリークバイアスにしました。

中間周波増幅回路

次に中間周波増幅段です。これはTV用のチューナ管でなんら差し支えないでしょう。手持ちの都合上双5極管の6AR11を使いました。gm=10,000のリモートカットオフですが、Ec2を100Vと低めにすれば使いやすい球になると思われます。もう一つの5極管ユニットが余っていますが、使い道が思いつかないので、そのままにしておきます(汗)。AVC電圧はこの中間周波増幅段のみかけることにしました。

検波回路と音声周波電圧増幅回路

やはりひずみの小さい2極管検波を採用したいところです。3極管を2極管接続してみてもよいのですが、それではつまらないので、2極管が封入されたコンパクトロン管を探してみます。6AV6のようにカソードが共通になった2極-3極複合管が見当たりません。そこで、手持ちの都合ではありますが、独立したユニットが封入されている6AG11を使ってみることにしました。この球は独立した双2極管とμ=66の双3極管の合計4つの複合管でICさながらの球であります。FMステレオ復調回路用に開発された球で、このように2極管との複合管は他にもいくつかあります(6B10, 6AY11など)。
3極管の一つを検波後の音声周波電圧増幅段として利用します。従って6AV6と同じような回路になりました。ゲイン不足が予想されるので、μ=100の3極管が封入されている同タイプの6AY11が入手できたら、差し替える予定です。

電力増幅段

コンパクトロン管のパワー管は水平偏向管として非常に豊富です。あまり大きいものを使うのは不釣り合いですから、手持ちの都合でプレート損失7Wの6JZ8をシングルの5極管接続で使用しました。中μ3極管が封入されていますがこれも余ってしまいます。

全体の回路図は下図のようになっています。アンテナコイル、バリコン、IFTは今回もラジオ少年で用意しました。電源トランスは東栄変成器の280V-75mAの伏型タイプで、OPTは3Wシングル用を使いました。

小さいシャーシで組んでしまったので、IFTと球の感覚が狭く、余り良い配置ではありません。熱で炙られて動作が不安定になりそうです(汗)。動かしてみて、受信感度と音声ゲインがやや低く回路定数の調整が必要ですが、とりあえず完成としました。

やはり整流管からの熱が猛烈ですぐにシャーシが熱くなってしまいます。使ってないユニットが5つもあり、実にムダの多いラジオになってしまいましたが存在感は立派ですね(笑)。
グリッド注入方式の欠点なのか、周波数の低い方とIFTの調整を施すと周波数の高い所でゲインが不足してしまいます。回路の調整が必要なのか・・・?
ヒーターが勢い良く光るので、露光時間をやや長くして写真を撮ってみました。

次回はmT9ピンオンリーで作る5球スーパーラジオを試してみたいと思います(笑)。これも誰も作ったことがないと思います。

【追記】
感度不足が気になっていたので、6AR11の使っていない5極管を使って、混合段の前に非同調高周波増幅段を設けてみました(つまり高1中1の構成)。10mHのチョーク負荷で感度が少し増したのですが、やはり発振の可能性が高くなり、調整がよりクリティカルになってしまいました。球の配置の問題もあり、これ以上の改造は難しそうです。