JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

ノートPC用昇圧DC-DCコンバータの製作と実験

移動運用で使用しているモバイルPCのVAIO type Pがバッテリーの不具合を連発し(容量がすぐに空になる。2度直しても)処理能力が低いこともあって(JT65Aのデコードにやや時間がかかる)、Win8.1が載っているAcerの11インチPCに買い換えました。タッチパネルなので割りと便利で気に入っているのですが、バッテリーの持ちが悪く、2時間の動作が精一杯。スペアのバッテリーの換装もできず(バッテリー本体一体型)、外部からの電源供給がどうしても必要でなってきます。VAIO type Pでは電源電圧が10.5Vであったため鉛バッテリーのDC12VをLDO可変レギュレータを使ってバッテリー供給可能でしたが、こののAcerの電源電圧は19Vなので12Vからの昇圧が必要になります。最初は鉛バッテリー12VをAC100Vに一旦上げてACアダプタで供給していましたが、なんとも効率が悪いし荷物にもなるので、バッテリーDC12VをDC19Vへ昇圧するDC-DCが欲しくなりました。
そういった需要は多いらしく製品もあるのですが、自作してみることにしました。スイッチング電源の類は作ったことがなかったので勉強もかねて調べると、割と多くの製作例が出てきます。なぜかアマチュア無線家の方の記事が多いので、同じ事考えているんだなぁと(汗)。
一番多いのがMC34063というチョッパ型の昇降圧非絶縁DC-DC制御ICを使ったもので、スイッチング周波数が約30kHzで最大電流が1.5AまでならICだけでOK。それ以上ならば外付けのスイッチングTrが必要となるもの。リプルレベルが改善されたピン互換のNJM2392というのもあり、どちらも秋葉原で簡単に入手できるICです。
次に多いのがLT1170という5Aまで扱えるスイッチングTrも内蔵されたもので少々値段が高いのですが、インダクタ、ダイオードコンデンサと電圧を設定する抵抗だけで昇圧や降圧が可能な便利なICです。これで作ってみることにしました。
Acerのノートは最大1.5A程度なのでそれほど大きな放熱器も必要なく、SBDもアキシャルリード1N5822を使いました。インダクタは秋月で手に入る100uH 9A、基本回路はデータシートのままです。フェライト材のインダクタは損失が大きく発熱が心配なので、鉄カーボニルのものが良さそうです。低透磁率なのでどうしても大型になりますが致し方ないです。

回路図はこちら。

割と低リプルのDC19Vが得られ、実際にノートPCを動かしてもレギュレーションは良好でした。30W負荷でしばらく動かしても放熱器とSBDがほんのり暖かくなるだけで放熱の問題も大丈夫そうです。
DC-DCで一番問題なのはアマチュア無線バンドへのノイズです。LT1170は約100kHzのスイッチング周波数で駆動しており、数ターンコイルでIC付近の輻射をピックアップしてスペアナで見ると・・・・

の用に約100kHzを基本波としたノイズがビッシリと見えます。このノイズがPCへのケーブルを伝ってアンテナやリグへ輻射するのを防ぐことを考えておかないといけません。そこでノイズ抑制の効果を実験しました。出力ケーブルの根元に4ターン巻きつけたコイルでノイズをピックアップした信号をスペアナで見て評価してみました(基板はケースに入れずむき出しのまま)。まずは無負荷時。

30〜60MHzに見えるのはどこからかのノイズ、85MHz付近の鋭いピークは放送波(FMヨコハマ)です。電子負荷で20W消費させるとノイズレベルがぐっと上がります。

特に7〜20MHz付近に出ているノイズがイヤですね(苦笑)。40W消費時は、

さらにノイズレベルが上がり、70MHz付近にもピークが出てきました。
基板上に100uHのパワーインダクタと1000uF//0.1uFのパスコンを付けると20W消費時のノイズレベルが幾分低下しました。しかしローバンドのノイズレベルがまだまだ高いです。

次に出力ケーブルにAL値4,700のフェライトコアを3つ直列してコモンモードチョークすると、20W消費時で、

のようにかなりノイズを除去することができました。基板をケースを入れるとICからの輻射もシールドできると期待できます。しかし実際に運用してみないとわからないので、今度の移動運用の時に実際に使用したいと思います。