JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

E級高周波アンプの実験

パワーMOS FETのスイッチング回路は高効率で知られていますが、MHzクラスの高周波駆動になるとスイッチング損失が無視できなくなります。スイッチング損失とはFETがONからOFF(またはOFFからON)になる途中に電流が流れてしまうまたはFET内の電圧損が生じてしまうことで、中間領域ではFET内で熱になり効率が低下してしまいます。
スイッチング損失を減らす技術としてE級が知られていますが、数MHzの周波数でも実現可能であり、これをアマチュア無線に利用すると非常に効率の良い出力段になりそうです。
早速実験してみました。E級アンプには、ゼロ電流スイッチング(ZCS)とゼロ電圧スイッチング(ZVS)があります。ここではFETがONになるときにZVS動作するタイプで設計することにしました。つまり負荷に直列にLC共振回路(Q=5)が挿入された形になります。石はIR社のZVS用のIRFB60N60L、電源電圧12V、FETドライバにTC4422Aを使いました。


5W設計としたので出力インピーダンスは16Ωになります。従って50Ωにするために4:7のトランスを設けています(ジャンクのフェライトコアで)。

数Vppの入力でもVpp12VでMOSFETをらくらくオーバードライブできます。図は入力の信号に対して、50Ω終端の出力です。LC共振回路が付いているわけですから、矩形波ドライブにもかかわらず歪も少なくスイッチングノイズが軽減していると言えます。

0.9MHzで駆動、電源電圧12Vで0.46A消費したとき出力が5Wとなりました。つまり効率90.6%をラクラク達成しました。これは非常に効率の良いアンプであることがわかります。小さな放熱器で設計可能ですね。

このアンプの欠点は、周波数が共振周波数およびデューティ比が50%よりもずれると効率がガタ落ちすることです。スイッチングなのでもちろんノンリニア動作。単一バンドのCW用の終段にしか使えません。