JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

管球式多極管全段差動アンプ

オーディオの世界においても、「真空管 vs. 石」なる論争があるようですが、プロ用はともかくとしてアマチュアのクラフトオーディオにおいてはその比較は無粋なものです。確かに、真空管アンプから出ている信号は電気物理的には歪みだらけで、ダンピングも悪く、重くて熱くて高価で割れやすい。電源はまともに安定化されていないし、カップリングコンデンサーで色づけされ、なによりも出力トランスを通して出てくる強磁性体の音を嫌う人も多いわけです。しかし、真空管アンプはよいものです。言葉ではなかなか伝えられません。当局は製作技術が未熟なので、管球式のOTLアンプを作ることはできません(いつかは作りたい)。出力トランス式も選べば結構良い音がします。小出力ならば割と低歪みにすることができます。
真空管アンプにおいても、その回路形式はほとんどきまっていてあまりバリエーションはありません。しかし、中には段間トランスをかますやり方を好む人や、初段にいきなり送信管クラスの直熱3極管を持ってくる変わった方もいますが、あまり感心しません。現代的にと、オペアンプの考え方を取り入れるのが「全段差動」式で、音が良くシンプルで作りやすいために結構人気があります。
当局も6SL7/6L6で作ったことがあるのですが、全ての動作クラスがA級なので、とにかくゲイン不足で物足りないアンプでした(DCアンプみたく初段に差動FETの定電流負荷を入れてハイブリッドにする人もいるくらいです)。というわけで今回は、初段を6EJ7の5極管にしてゲインを稼ぎ、High-Gm管でたっぷりと電流を流してやろうというコンセプトで設計しました。正直出力管はなんでもよいのですが、とりあえずEL34の3結です。定電流回路はトランジスタとツェナーのディスクリートにしました。これはこだわりです。
小さくて見づらいですが、回路図です。

初段の6EJ7には2球で出力管並に39mAも流します。カソード電位が低いので、C電源を用意して引っ張ってあげないと定電流を作ることができませんでした。これは面倒ですが仕方がありません。出力段はトランスにUL端子があればUL接続にしたいところです。EL34の2球に70mA流します。カソード電圧が24Vになりますので、損失が約1.7Wになります。放熱器を取り付けたパワートランジスタが必要になります。帰還量と位相補正は、リンギングが出ないように調整しましたが、実際に音を聞いてみないとわかりませんね。OPTは評判の良いタンゴのFE-25-8にしました(持っていませんけど)。
真空管の回路図もSIMetrixで簡単にシミュレーションできます。素晴らしいですね。周波数特性と10kHz矩形波応答です。まずまずの結果です。100kHzまで応答が伸びていますが、実際にはこんなに良くないと思います。


いつ製作に取りかかるのはは全くの未定。出力トランスを安く入手したら考えます(苦笑)。