JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

アマチュア無線局JF1DIRのアクティビティをつづっています。

部品箱拝見(2) スチロールコンデンサ

ご存知のようにコンデンサキャパシタ)には、数々の種類がありその用途により使い分けられます。高周波信号をフィルタリングしたり増幅するときにはLC共振回路が使われます。並列共振回路(タンク回路)ではコイルとコンデンサのリアクタンス|Z|が一致した周波数条件において、タンクの両端のインピーダンスが∞になり、タンク内の電流も∞になります。このように電気エネルギーが蓄えられるので“タンク”と呼ばれるのですが、実際の回路ではコイルとコンデンサにそれぞれ損失がありますので、無限にタンクされるわけではありません。なるべく多くタンクするには、損失つまり熱に変わってしまう成分を小さくする必要があり、コイルとコンデンサ、それぞれに低損失特性が要求されます。
低損失コンデンサとして古くから重宝されるているのが、スチロールコンデンサ(スチコン)です。構造は一般のフィルムコンデンサと同等に、金属箔がぐるぐると巻きつけられている構造なので、それ自身インダクタンスを有し、数十MHz以上の高周波では使いにくいのですが、誘電体であるポリスチレンが低損失であり、高Qのタンク回路が作れます。ポリエステルやポリプロピレン、テフロンよりもtanδが小さいのが特徴です。
さらに、温度特性が良く、ポリスチレンが吸水しにくい性質のために、安定性が高く、高安定なVFO回路に好まれて使われたようです。
低損失の材料は大方低誘電率なので、高い静電容量のコンデンサを作ることはできません。おそらく10nFが限界だと思います。さらにポリスチレンという材料は比較的低融点の非結晶熱可塑性樹脂なので高い温度に耐えられなく(半田付けの際には注意)、耐溶剤性も低いのでフラックス洗浄の際にも注意が必要です。というわけで自動化された基板実装ラインには適さないという理由もあって、ましてやチップ化できないために、今では過去のデバイスとなってしまいました。
フロントエンドやフィルタなどの高Q回路には使いたい材料なので、よく使うデバイスです。手に入り難いのですが、やはりあるところにはあります。25V〜数100Vの耐圧の、良く使う容量のスチコンをたくさん揃えています。


アキシャルリードとラジアルリードの両方があります。小容量でプリント基板に実装するならばラジアルリードのほうが使いやすいのですが、なかなか売っていません。