JF1DIR業務日誌(はてなblog版)

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理不尽な進化

昨日読んだ本を評しますと・・・

進化論、結構好きです。神の創造論と真っ向から対立する理論であり、こんにちでも多くの論争があるそうです。科学の方法論上、進化論は「実験による検証・反証は不可能」なので、本来ならば「疑似科学」「形而上学」として科学の世界から葬られそうでいて、全くそうでもない。生物の多様性に一貫した理論的説明を与えるという、科学理論の中でもすばらしい理論体系であると思います。

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ

で、本書の書評。結論から言うと、これアカン奴でした(汗)。
本書は進化論に関する科学エッセイで、タイトルにあるように「生物の進化の過程には理不尽ともいえる偶然性が入り込んでいる」という内容です。著者のメッセージは「進化論というと弱肉強食の激戦に勝ち抜き一方的なイメージがあるのだけど、実は絶滅の歴史であり、その過程には理不尽な事象によるものもある」というものです。まぁ社会学的なアナロジーや日常言葉として用いられる「進化」にはそういう意味で使われていることが多いので、進化論を正しく理解していない人には「目からウロコ」な本かもしれませんけど、そうでない人(ある程度科学の教養がある人)にとっては当たり前のことを冗長に書いているだけの本でした。
そもそも進化論の中心概念は「自然選択」なのであり、環境の変化にうまく対応した個体が次世代に数多くの子孫を残すことができる、というものなのであり、隕石衝突のような大きな環境の変化が「運が悪い、だから理不尽」と言われてもそれはわれわれ人間の勝手な価値判断なのです。さらに進化論の次に大事な「突然変異」という概念自体が偶然性(確率論)によるものです。もっと言うと原始地球のどこかで起こった生体の基礎となるアミノ酸などの有機分子の合成過程も相当な偶然性の上に成り立っているのだと予想されるわけです。
さらに著者自信のブログのテキストをそのまま本にしたようなので、同じ主張が何回も出てきて議論の展開がちっとも進まず、かなりイライラします。また(わざとかもしれないけど)特に前半で、ダーウィンの進化論の概念を説明する際に「競争と生き残り」というのを繰り返します。いや、自然選択ですよそれは!正確に説明してよ!って突っ込みを入れたくなって読むのが辛くなってしまいました。